活性汚泥による排水の処理について

この記事はこんな方、こんなお困りごとにおススメです

  • 食品工場や水産加工工場など、有機系の排水が発生する施設の施設管理ご担当者様
  • 現状、排水処理施設を管理されているご担当者様
  • 排水処理の仕組みについて確認されたい方

排水中の汚れ分(有機物)は活性汚泥により分解される

活性汚泥法とは、曝気槽内で排水と好気性微生物を空気を送り込みながら接触させることによって分解し、排水を浄化する方法です。好気性微生物は、有機物を分解すると増殖し、活性汚泥というフロック(かたまり)を形成します。

活性汚泥は、後段の沈殿槽で沈殿するので、排水は下層にフロック、上層に浄化された上澄水に分離されます。上澄水は排水基準を満たせば処理設備内から放流することができます。

好気性微生物が、排水中の有機物を分解してきれいにする。

好気性微生物は有機物を分解しながら増殖し、フロックを形成する。

汚泥は沈殿槽で沈殿し、分解され浄化された上澄水とフロックに分離される。

活性汚泥法を用いた処理設備概要

前処理工程(微生物処理に悪影響を与える要因を取り除く)

微生物による生物処理を適切に行う前処理として、排水中の夾雑物や、油分を取り除いたり、pH調整を行う必要があります。

スクリーン:ポンプや機械などの保護のために、木片やビニール片などの夾雑物を取り除きます。夾雑物を取り除くことは、余分な薬剤添加などを防止する効果もあります。除去したい夾雑物に合わせて、目の開き(目幅)などを選択します。

pH調整:極端にアルカリ性や酸性に排水が偏っていると、微生物による処理や凝集剤を用いた処理に悪影響が出ます。一般的にpH6~8付近になるように調整を行います。

加圧浮上装置:油分を多く含む排水は、微生物による処理において悪影響を及ぼしたり、沈殿槽での汚泥浮上の原因となることがあるので、必要に応じて油分を取り除きます。

流量調整槽(排水の流量と濃度を均一にする)

工場では、1日24時間でいつも同じ濃度の排水が、一定量排出されるとは限りません。生産の工程や工場の稼働、機器装置の洗浄のタイミングなど、排出される排水の濃度や量は一律ではありません。

活性汚泥法で処理の主軸を担う微生物は、急激な原水の変化に対応が難しいため、ある程度安定した排水になるように調整を行う必要があります。そこで、処理の最初に流量調整槽を設け、流量とBOD濃度を一定にする必要があります。

曝気槽(有機物の分解を行う)

曝気槽では活性汚泥により排水中のBOD(汚れ分)が分解され、浄化されています。一般的に、その後の沈殿槽での処理などを考慮し、曝気槽の活性汚泥量(MLSS濃度)は2000~3000mg/L程度になるように設定します。

活性汚泥は、水質や水量の変化などにより優勢菌種が入れ替わり、処理不良を引き起こすことがあります。曝気槽では、優良微生物が働きやすいように栄養バランスを整えたり、濃度管理を行ったりと、適切な管理を行うことが必要不可欠です。

沈殿槽(分解によって生じた活性汚泥と上澄水を分離する)

沈殿槽では、分解の過程で生じた活性汚泥を沈め、上澄水と分離することで処理水を得ます。分離された汚泥は定期的に引き抜きを行い、返送を行ったり、産業廃棄物として処分を行います。

定期的な引き抜きを怠ると、汚泥が劣化し腐敗の原因となったり、また汚泥がキャリーオーバーする場合もあります。さらに活性汚泥に糸状菌や放線菌が含まれると、発泡や沈降不良となる場合もあるので監視が必要です。

汚泥処理(一部の汚泥は返送し、残りは産廃処分へ)

活性汚泥による処理の過程で、汚泥が発生します。一部の汚泥は、曝気槽でのMLSS濃度を維持するために曝気槽に返送され、これを返送汚泥といいます。返送されず残った汚泥は、余剰汚泥といい、この汚泥は産業廃棄物として廃棄処分されます。

余剰汚泥は多くの水分を含むので、脱水機などで水分を除去することで、産廃にかかる費用を抑えることができます。

良好な処理を維持するためには

活性汚泥処理を良好に進めるためには、活性汚泥が活動しやすい環境を整える必要があります。

活性汚泥中の微生物を管理する

活性汚泥には様々な種類の微生物が含まれ、その菌の種類によっては処理不良の原因となるものもあるので注意が必要です。

例えば

  • 糸状菌や放線菌が増殖し、沈降不良や発泡が起きる
  • 殺菌剤やpH異常により微生物が死滅してしまった

ポイント

優良微生物が成育しやすい環境を作るため、「空気量の調整」「栄養バランスを整える」「急激な排水変化を未然に防止する」などの対応を行う必要があります。また、微生物は顕微鏡による観察が可能なので、「微生物観察による菌種の把握」と「施設の状況」を相対的に確認しながら、トラブル原因の解明と対策の検討を行う必要があります。

おすすめ

お悩みの原因解明、適切な処理をご提案(外部サイトへ)

内田博士の排水診断ページへ

排水に合わせた処理設備で運用を行う

曝気槽内の微生物量(MLSS濃度)に対して、排水原水の汚れ分(BOD)が過剰となってしまうと、微生物による処理が間に合わず、処理がうまくいかないことがあります。

例えば

  • 繁忙期で生産量が増えたため排水量が増加した
  • 新しい製品の製造がはじまり、より負荷の高い排水が出てくるようになった

ポイント

「排水中の汚れ分(BOD)」に対して「曝気槽内の微生物量(MLSS)」が多すぎたり少なすぎたりしないように処理を行う必要があります。排水中のBODが高い場合は、その分多くの微生物が必要になり、場合によっては曝気槽を大きくしたり、高濃度処理を行うための改良(流動担体槽を追加するなど)が必要です。

おすすめ

既存設備を活かした排水処理設備をご提案します(外部サイトへ)

排水処理設備バイオバランスページへ

-排水処理